NetBSD/pc98
かつて国民機と呼ばれ一世を風靡し日本の至る所で活躍をしていたNEC
PC98シリーズ。AT互換機の台頭によりその存在意義を問われ,
今やその存在さえ忘れ去られたかのよう。そんなPC98シリーズへのNetBSDの移植。それがNetBSD/pc98だ。
PC98シリーズとは
かつて8bitパソコン全盛期,
日本には数限りない独自アーキテクチャマシンが存在し,
その流れは16bitパソコンでも続くかに思われた。しかし8bitパソコンでトップシェアを誇ったNECが放ったPC98シリーズはさらにシェアを延ばし,
気付くと辺り一色PC98シリーズになり,
まさに日本パソコン界の覇王と呼ぶべき存在となった。ついにはEPSONによる「PC98互換機」まで登場することになった。
ハードウェア的にはCPUにIntel 8086シリーズを使い,
いわゆるIBM-PCにかなり似た構成であったが,
最大の特徴は「漢字VRAM」を搭載していたこと。これにより当時のCPU能力でも高速な日本語テキストを表示できた。日本語を表示しようとすると全て「グラフィック」として描画するしかなかった当時の海外製PC/AT互換機に対して非常に有利であった。
しかし事態は急変する。まずはAT互換機用のIBM
PC-DOS/Vの登場。いわゆるDOS/Vである。これがハードウェア的に日本語が表示できなくてもソフトウェアで表示可能にした。さらに年々パソコンの能力は向上していき表示性能の差は人間にはわからなくなっていく。そして199x年。Compaqが約10万円という当時では超低価格で日本市場に参入する。後にCompaqショックと呼ばれるこの事件以来,
日本にも海外の大手コンピュータメーカがこぞって参入,
日本の各社もそれまでの独自路線から皆AT互換機路線へ変更,
中でも富士通のFM-Vが人気を醸す。Windows等の利用によりハードウェアの差はどんどん見えなくなり, 海外からのソフトウェアも主流になるに従いいつしかPC98ではちゃんと動かないというソフトウェアも増えてくる。
そしてNECもとうとう独自路線からPC/AT互換機路線に変更し,
PC98というアーキテクチャには終止符が打たれた。Compaqの参入はNECにとってまさに「黒船来航」だったと言えるのかもしれない。
NetBSD/pc98とは
NetBSD/pc98は,
NetBSDの正式なポートではない。つまりNetBSDのソースツリーにマージされていない。もうすぐという噂を聞いたことが何度かあるが,
まだされていない。i386というとてつもなく大きく有名なCPUアーキテクチャ,
しかし今までAT互換機のみだったという状況も関係あるのかもしれない。また,
日本の開発者パワーがFreeBSD(98)に集中したのかもしれない。いずれにせよ,
現在NetBSD/pc98はまだ独自の存在である。
対応するハードウェアは,
CPUに386以上のCPUを搭載したPC98およびその互換機。対応するデバイス,
周辺機器は相当な数に上ったと記憶しているが,
現在の状況は(この文章の筆者には)わからない。
最新の情報としては,
NetBSD/pc98-currentプロジェクトがSourceForge.jpで始まったようだ。後期のPC98機はPentiumやPentiumII/Celeronを搭載したマシンも多く存在する。マシンパワーからすれば旧機種と呼ぶには惜しい。まだまだ現役で使用可能なので今後も精力的に開発が行われることを願う。我と思わん方々はぜひともプロジェクトに参加してみて欲しい。
▼ NetBSD/pc98-current Project
- http://sourceforge.jp/projects/netbsd98current/
- http://netbsd98current.sourceforge.jp/